リバイバルジャパン取材日誌
「力丸嗣夫の手探り伝道記」
今週号のリバイバル・ジャパンの「風知一筆」(以下が内容)で、力丸嗣夫牧師の「手探り伝道記」に触れた。すると、それを読んだ読者から「その本はどこで手に入るのか?」という問い合わせが相次いでいる。
これは、北九州シオン教会の週報に連載されたものをまとめたもので、販売はしていない。力丸牧師と相談し、本誌にて連載をさせていただくことにした。近々スタートする(4月1日号より)ので、ご期待いただきたい。
風知一筆
リバイバル・ジャパン編集長 谷口和一郎
根っこの端のその先から
前号で車椅子から立ち上がった証を書いていただいた力丸嗣夫師(北九州シオン教会)から、その半生を書き記した『手探り伝道記』の最後の1冊が送られてきた。そこには同師がダネル・マクレン宣教師と共に高知県西部地区(幡多地方)で開拓伝道をした様子が詳細に書かれてあり、それをどうしても読んでみたかったのだ。
マクレン師というのは長きに亘って日本の僻地伝道に取り組まれた方で、布団も上げ下げして生活するなど日本人になりきって生活し、多くの人に愛された宣教師である。二人は、1960年代後半、幡多地方の人口10万全域にトラクトとヨハネ分冊を手渡しで届けようと、漁村へ、山村へと連日、車を走らせた。
ある日、二人は道の脇に車を停め、二手に分かれて山を登り始めた。力丸師は、笹竹が茂る道を登って行った。すると向こうから、郵便配達人がやって来た。この先の人家について確かめると、「あの家まで行くなんて大変ですよ。山の上ですから1時間ほどかかります。また行っても、お年寄りがいるだけですよ」と言われた。
しかし力丸師は、神に力を与えられて、崖をよじ登り、険しい山道を歩き続けた。「これから出会うであろうお年寄りに、永遠のいのちの道が充分に語られますように。神の国への道が、その方々に開かれますように」。祈り続け、約1時間半ほど歩いた頃、視界に一軒の家を捉えた。思わず「ハレルヤ!」と叫んだ。
家に着き、息が弾むまま、「おじいちゃん、今日は大切な話をするためにやって来ました。お水、飲ませて下さい…」と言うのが精一杯だった。そして、出された野蜜を飲みつつ世間話。やっと福音を語れる雰囲気になってきたが、大地に根を張って生きている老夫婦にキリスト教の教理を語っても仕方がない。そこで、彼らが拝んでいるものを確認すると、お日様とお月様、そして天照大神だった。力丸師はそれをきっかけに福音を語りはじめた。
「神様はお一人だけで、太陽も月もそのお一人の神様が創られたもの。天照大神は日本の神様ではなく、天地創造のただお一人の神様を日本人が日本人なりに考えて付けた名前で、天地創造の神こそが完全な神様のお名前なのです。これからは、その神様にお祈りしてください」
「その神様が今日、使者を遣わしてこの事を伝えてくださったのですから、これからは、この使者が持ってきた読み物(聖書)を読んで、私たちの心の汚れを取り去るために身代わりになって死んでくださったイエス・キリスト様に感謝と祈りをしてください。辛いとき、悲しいとき、死の迫りを感じるときは『イエス様、助けてください!』と心からお祈りしてください」
けっして町の教会に通うことができない彼らのために、若い力丸師は熱く福音を語り続けた。老夫婦は、その人生の終わりまで創造主なる神に祈り続けると約束してくれた。そして帰ろうとしたとき、納屋の方から「ウォー、ウォー」という唸り声がするのを耳にした。それは病気で座敷牢のような所に入れられたままの48歳になる息子だった…。その後、また一つのドラマが始まるのだが、この手記を読んでいて熱いものがこみ上げてきた。
半日かけて一軒の家に福音を伝える。とても効率の悪いことだ。しかしそこには、効率や費用対効果などという言葉では計れない豊かなものがある。人が、そのためには命を失ってもいいと思える世界がある。マクレン師から力丸師へ、そして次の世代へと引き継がれていく何かである。それは目には見えないが、教会が決して失ってはいけない何かである。
都会でなされる大きなイベント、多くの人数を集める教会や集会。それらは決して悪いことではない。しかし私たちの目が、そういった華やかなものにばかり集中し、見栄えばかり気にし始めると、大切な何かが枯渇していく。木はどこから栄養を摂るのか? それは、木の中心から一番遠い、根っこの端のその先からである。
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