リバイバルジャパン取材日誌
第2回目の東北取材
震災から2ヶ月が経ち、5月11?15日、2回目の東北取材に夫婦で行ってきた。今回、訪れたのは福島県郡山市、宮城県気仙沼市、東松島市、福島県南相馬市、いわき市。2ヶ月が経ち、支援活動も次の段階を迎えている。
郡山グレースガーデンチャペル(三箇義生・豊実牧師夫妻)は、避難所でお母さんや子供たちを支援する活動から、避難所を出てアパート暮らしを願う被災者を支援する働きにシフトし始めていた。新しい暮らしを始めるために必要な電化製品、家具などをキットとして無料で提供しようという試みだ。取材に行った日も、ある若い夫婦がキットの申し込みに訪れていた。彼らは原発から3?ほどのところで暮らしていて葬祭業を営んでいたが、もう地元には戻れないと判断し、郡山での生活を模索していた。また、何とその方は、福島第一聖書バプテスト教会の佐藤彰牧師をよく知っておられた。以前より、葬儀で使ってくれていたのだという。
気仙沼市では、気仙沼聖書バプテスト教会(千葉仁胤牧師)とキングス・タウン(森正義施設長)を訪れた。陸前高田などでは瓦礫の撤去作業が進んでいるが、気仙沼はまだ手つかずと言っていい状態で、町全体が魚の腐った臭いで覆われていた。津波の被害を免れたキングス・タウンは、一時期、街の復興の一拠点となり、被災した人々が自然に心の中を語り合うスモールグループのようなものも生まれたという。
東松島市では、基督聖協団の宮城聖書教会(田中時雄牧師)を訪れた。田中牧師夫妻は、会堂の1階部分が津波に襲われ、2階の牧師館に閉じこめられたまま4日を過ごした。水が引いて自衛隊に救出された後、避難所に送られたが、そこでは、配給の豚汁が多い少ないで言い争いがあり、トイレは汚物で溢れ、家族を亡くされたおばあさんが目の前で気が触れていったという。「私にとっては、自宅に閉じこめられた4日間より、避難所の生活の方が過酷でした。」と言っておられた。田中牧師は、被災者にお願いされて検死にも立ち会い、自身もPTSDのような症状になったそうだ。
仙台では、海沿いにあった教会堂が津波で流されたシーサイドバイブルチャペル(内藤智裕牧師)を訪れた。現在は、市内のカフェだった場所で礼拝を守っている。インタビュー後、会堂があった場所に連れて行っていただいたが、破壊し尽くされた瓦礫の街に十字架が凛と立っていた。そこでいろいろとお話を聴いていると、宮城のテレビ局も取材に来て、内藤牧師へのインタビュー収録が行われた。
南相馬市では、福島第一原発から32?の距離にある日本基督教団・鹿島栄光教会(佐々木茂牧師)を訪れ、その後、22?の距離にある原町聖書教会(石黒實牧師)を訪れた。南相馬市は、原発事故後、市民のほとんどが避難をした町。74歳になる佐々木牧師に、「なぜ町を出なかったのですか?」と訊くと、「僕はこの町が好きだから。」と答えてくださった。原町聖書教会の石黒牧師は、どうしても避難所に行けない事情を抱えた信徒がいて、「羊飼いが羊を捨てて逃げる訳にはいかない。」と言っておられた。覚悟を決めた牧師たちは、とても明るく、大いに語り合い、笑い合った。
南相馬は、住民も半分ぐらい戻ってきていて、礼拝もいつものように捧げられている。近くのスーパー、コンビニも開いていて、郵便や宅配便も届くようになっている。ただ、幼稚園から高校まで、学校は全て閉鎖されている。原発の不安定な状態が続く中、このままそこで牧会を続けることがいいことなのかどうか、それはわからない。それぞれの牧師、信徒の信仰によることだが、私たちの家族である彼らをこれからも支援し続けたいと思った。
その日は5月14日、土曜日で、原町聖書教会を出たのが夜8時だった。夜の道を、飯舘村、川俣町などを通っていわき市に向かった。放射能汚染の強い地域で、飯舘村は全村避難の直前だったが、何軒かの家から灯りが漏れていた。村全体、町全体を、とても悲しい雰囲気が覆っていた。何も壊れていないのだが、「異界」に迷い込んだ気がした。
いわき市に到着したのは午後11時半頃。グローバルミッションセンター(森章牧使)のリーダーの一人、五十嵐義隆氏の娘・愛波(エリナ)ちゃんが数日前に息を引き取り、教会では、愛波ちゃんが生き返ることを願って徹夜の祈りが捧げられていた。そして、翌日の日曜日には、愛波ちゃんを神に捧げ、すべてを神の主権に委ねるという意味での「献児式」が行われ、翌月曜日に火葬が行われた。この件に関しては、いろいろと思わされることもあり、簡単にはコメントできない。その日の私としては、娘を亡くした五十嵐夫妻のために泣くことしかできなかった。
また、複数の場所で、被災地の牧師たちに対し、外部から行って、「こうすることが御心だ!」と強く勧める牧師がいたり、「神はこう言っておられる。」と預言する外国のクリスチャンたちがいた。預言を聖書から吟味すると言っても、どこに教会を建てるかとか、どのタイミングで行動を起こすかなど、聖書には書いていない。大切なのは、その地に立てられた牧師の権威と霊的感覚を尊重する姿勢だ。善か悪かの判別の付かない事柄については、その教会の牧師が心から「アーメン」と言えるかどうか、心に平安があるかどうか、それが最も大切なことだろう。無責任な御心の強要や、愛のない言いっぱなしの預言は、現場を混乱させるだけである。
さらに、ボランティアが満たされて来た頃に、「もう十分間に合っています」と応えると、怒って帰って行ったクリスチャンのボランティアチームもいたという。現地の牧師は、自分も被災者なのに、多くのボランティアの申し出に応えようと疲弊しているケースもある。とても優れた働きをしているボランティアチームがある一方で、このような残念な話しも聞いた。
愛と平安と秩序の神が、被災地の教会を、そして苦しみの中にある人々を覆ってくださいますように。
日本全国のクリスチャンと世界のクリスチャンが、本当に現地に必要な支援を、謙遜な心で続けられますように。
追記:今、現地で必要なものは何か? と言えば、「現金」である。政府からの支給も秋以降になりそうだし、この夏を乗り切るお金が必要となっている。右手のしていることを左手に知らせないような献金が被災地の各教会に捧げられるようにと願わされる。
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