舟の右側
地引網出版
キリスト教雑誌 舟の右側

ワイチローの取材日誌

リバイバルジャパン取材日誌

CGNTV 収録内容

更新日:2016年8月 4日

キリスト教衛星放送のCGNTVで『私は教会のメンバーです』(トム・S・レイナー著 赤松樹美子訳)の収録をしてきました。インタビュアーは久米小百合さん。以下は、その日のために準備した原稿で、およそこの通りのことを語りました。

Q1.今日ご紹介いただく本、「私は教会のメンバーです」は谷口さんが代表をされている地引網出版から出されたということで、出版に至った経緯を教えていただけますか?

谷口:社内のスタッフのひとりが次に出す本として勧めてくれました。著者のトム・レイナーさんは、アメリカのバプテスト派の信徒なんですが、神学博士号も持つ人で、教会向けのコンサルタント会社を経営しています。これまでに500以上の教会のコンサルタントをしてきた経験から、教会が抱える悩みをよく知っておられる方なんですね。そういう信徒の視点から「教会のメンバー」について書いた本ということで興味を持ち、出版に至りました。

Q2.著者がなぜこの本を書かれたのかを教えてくだい。

谷口:端的に言うと、こういう一文があるんですね。「この小さな本を通して地域教会が強められること、それが私の祈りです。また、そこに集う一人ひとりがキリストの体に属していることの途方もない価値を見出してくださるようにと祈ります。」 著者は、会員制カントリークラブのメンバーと、教会のメンバーを対比させながら話を進めていくのですが、会員制カントリークラブというのは、お金を払ってサービスを受ける、というものです。そういう感覚が教会の中にも入り込んでしまって、献金しているんだから私たちはサービスを受ける権利がある、と思い込んでいる人たちがいる。教会の礼拝スタイルも、説教も牧会も、私たちを満足させるものでなければならないという心理的傾向です。これは表立って言うわけではありませんが、資本主義社会に生きる私たちが陥りやすい傾向だと思います。消費者マインドというか。 著者は、聖書はそんなこと言っていないはずだ、と反論するわけです。

Q3. 内容がとてもわかりやすく、簡潔に本質を捉えていると感じました。また、章ごとに「約束の告白」と「学びのために」で締めくくっているので、ポイントが理解しやすくなっていますね。これは、アメリカでも多くのクリスチャンに読まれているのですか?

谷口:アメリカではたくさんのキリスト教の本が出版されていますが、そういった本の売上げランキングでNo.1を取った本でもあります。原題は『I Am a Church Member』。つまり、著者のそういう主張に共感する人もたくさんいたということですね。アマゾン(米国)のカスタマーレビューでは640件ほどの書き込みがあって、ほとんどが5つ星の好意的な内容になっています。また、これは一方的な見方だとする反論もあります。どちらにしろ、相当反響があったということです。

Q4. 本書の中で、教会のメンバーが陥りやすい10パターンが書かれていますが、実際に思い当たることもあり、心が痛い思いがしました。ここで、みなさんにも10パターンをご紹介いただけますか?

谷口:「礼拝をめぐる争い」「延々と続くが、たいして重要ではない会議」「設備が大事」「プログラム主導」「内部に焦点を当てた予算配分」「牧会的ケアに対して注文が多い」「権利を求める態度」「福音よりも教会の変化の方が重大な関心事」「敵意と怒り」「福音に対する無関心」。著者は、500以上の教会をリサーチして、ここに挙げた10の傾向があるとしています。礼拝では、どういう賛美を選ぶかで争いが起こり、一旦始めたプログラムを止めることが難しくなる。それぞれが自分の好みを主張したり、自分は重要人物であるかのように振る舞ったりしていくと、教会は、牧師や信徒の力関係で動くようになるわけです。

Q5. 教会はよくキリストの体とたとえられますが、この本ではどのように説明されていますか?

谷口:第一コリント12章27-28節、「あなたがたはキリストのからだであって、ひとりひとりは各器官なのです。」が本書の中心聖句ですが、この「器官」というのが英語では「member」なんですね。memberにはもちろん「一員」とか「会員」とかいう社会的な意味もあるわけですが、体の一部であるという分かちがたい構成要素という意味もある。著者は、その後者の意味が本来の聖書の主張だと訴えているわけです。 本書の序章では、二人の教会員の会話が出てくるのですが、その一人が「教会を出ようと思う。」と言うわけです。理由を聞くと、「牧師の説教で恵まれないから。」よく聞く話しのようにも思いますが、そこで私たちはどう振る舞うかが問われる。もっと恵まれる説教、もっと恵まれる教会を求めて、あちこちと探し回るのか。あるいは、その教会で、牧師が説教に集中できるように、他の奉仕を買って出て助けてあげるのか。真の教会のメンバーだったらどうするかが問われてくるのです。

Q6. 外国の本を日本語にして出版するというのは、大変なご苦労があったと思うのですが、いかがだったしょうか?

谷口:単行本というのは翻訳者と編集者の共同作業という面があります。今回翻訳してくれた赤松樹美子さんは、とても分かりやすい翻訳をする方で、少し難しい英文でも、要はこういうことです、という簡潔な訳をしてくれました。編集には、弊社の箭内という者と私が関わったのですが、箭内は優しい性格なので翻訳者の訳をあまりいじりません。でも私は、分かりやすくし過ぎだろう、もっと英文そのものが言っていることを伝えてほしいと言って、少し直訳に近づけました。あと、表紙のデザインはクリスチャンの古閑学人さんがしてくださったのですが、とても良いものが出来たと思います。

Q7.谷口さんご自身はこの本を通して、どんなことをお感じになられましたか?

谷口:日本のキリスト教会全般として、しばらく前から「教会のカルト化」ということがさかんに言われて来ました。でも「カルト」というのは「狂信的集団」を指す言葉ですから、言葉として適当ではないと思います。「権威を逸脱して用いた牧師」とか「牧師に盲目的に従った信徒たち」とか、そういう丁寧な言い方が必要です。ただ実際に、そうした問題があったことは確かで、それは改善していかなければならないと思います。
しかし一方で、教会に深く関わることは危険だ、あまりのめり込まない方がいい、という風潮も生まれてきています。個々人が神様とだけつながっていればいい、ということです。しかしそれもまた、聖書が言う教会ではないと思うのです。神様と繋がり、兄弟姉妹と繋がり、いかにして神様が望まれる愛の共同体を築き上げていくのか、それが問われている。
私自身、ある教会に属する信徒なのですが、牧師をはじめ信徒一人ひとりの方が教会に存在している、その存在自体から大きな恵みを得ています。ガーデニングを考えていただけるといいかと思いますが、庭に一本だけ花が咲いていたら、その花が枯れないようにするためには、絶えず目を配って水をやらなければなりません。しかし、多様な種類の花や木があれば、相互作用で土地の水分は保たれ、ミミズも土地を耕し、木陰もできて花は枯れにくくなるのです。私はそういう、多種多様な教会のメンバーが存在する力というものを実感しています。「存在力」と言ったらいいでしょうか。 そうした存在の恵みを受けながら、次の段階として仕え合っていく、そうすればさらに素晴らしい教会になっていくと思うのです。

Q8.地引網出版、あるいは谷口さんご自身の今後の計画、ビジョンについて教えてください。

谷口:地引網出版としては今、一つのテーマを掲げていまして、それは「あなたが変わる。教会が変わる」というものです。「日本の教会は変わらないといけない」などの言葉はよく聞くのですが、やはり何よりも、一人ひとりが愛の人格に変えられて、その集合体としての教会が変わっていくはずです。だから、人はどうしたらキリストの似姿に近づいていけるのか、という大きなテーマに、出版社としても取り組んでいきたいと思っています。そこで月刊「舟の右側」では、霊的形成とか霊的同伴などの特集を組んでいます。 また私自身は、一つの教会の一信徒としてどう生きていくのか、それを求め続けていきたい。またそれが、今後の出版にも良い影響を与えると思っています。

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